ポレポレ東中野で『人生フルーツ』を再演していたので、さっそく見に行ってきました。
DVD化もされていない本作、私は2017年公開時に一度見たきり。全国の小さな映画館で息長く上映されているようです。
4年前にも感想を書いてましたね。

今読んでも、ほとんど変わらない感想。
修一さんの仕事との向き合い方。ふたりの強い信念による積み重ねた生活の美しさ。このふたりはほのぼの老夫婦じゃない、強い信念と継続力でここまでやってきたんだ。これは自分もしっかりやらなきゃ、とても生きてるうちにあの境地にはたどり着けないぞ…という気持ち。
4年前と違うのは自分にもパートナーができて、どちらかが先に死ぬことを考えるようになったことくらいでしょうか。まあでも死ぬときは死ぬし、大事なのは生きている時間をどう積み重ねるかです。
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4年前は買わなかったパンフレットを買って読んでいたら、津端修一さんが「自由時間研究家」と名乗っていたことを知りました。調べてみたらいくつか著作があるようだったので、図書館で借りて読んでみることに。
出版は1989年(32年前)!

もくじはこのとおり。
1章・ある生活シナリオから
2章・生活小国からの脱却
3章・家族・バカンスのすすめ
4章・家族・クラインガルテンのすすめ
ヨーロッパのバカンスの風習やリゾート政策などを建築やまちづくりの観点から解説し、日本にも取り入れるべきと説いています。
働いていれば何とかなると働き続けた日本人。(中略)しかし、それだけではどうにも疲れてくるし、高齢化社会の中で長持ちしそうもない。自分が、その時に、どこで、どのような生活をすることになるのか。その長いスパンの生活設計は、他人まかせでも、高齢化してからでも間に合わない。豊かな経済社会も、豊かな福祉社会も、これからは他人まかせでは信用できない。
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経済的に豊かになったとはいえ、日本人は長期の休みも取らず、家族の時間を大切にしない。庭のないマンションばかりが都市を支配し、土とふれあうこともない。高齢化が進み、高齢者の自由時間をどう使うのかを真剣に考えなければならない…等々。
30年前の本なのに、今も課題は全然変わっていないな…と驚きました。
本の中に「経済大国から自由時間大国へ」という項目がありましたが、すっかり経済大国からも転げ落ちそうだし、自由時間を楽しめる豊かな国になったかといえば…どうでしょうか。
1989年といえばバブル経済の頃。今よりはリゾート開発やバカンスなどへの需要が大きかったのだろうなと思わせる記述も多いけれど、「日本人も自由時間を楽しめるようにならなきゃダメだぞ」というのは今も変わらない課題なのではないでしょうか。
30年前は、
日本は経済大国になった!→仕事やお金ばかりではなく、自由時間を豊かにするべき→ 働き方見直し・リゾート開発政策(本書の主張)
今は、
経済発展も微妙、給料もあがらない…→お金をかけずに(効率よく運用して)自由時間を豊かにするべき→ ミニマリスト・地方移住・FIREブーム
状況は違っても、目指しているところは一緒なのかもしれない。
30年前とかたちは違うけれど、もっと個人が自由時間を楽しめる社会になるべき、という修一さんの考えにはとても共感しました。
絶版になっているので、図書館で借りて読むのがおすすめ。
「1章・ある生活シナリオから」には、修一さんと英子さんの生活がどんなふうに作られていったのかエッセイ風に綴られていて大変面白いので、映画『人生フルーツ』を見た人は1章だけでも是非。