ベランダ菜園を楽しむ人は、毎年新しいタネを購入するのが普通だと思います。
出回っているタネはほとんどがF1品種。そこからできたタネをとって来年撒いてもあんまり良いものはできないからです。
F1と固定種の違いはこちらにも。
せっかく固定種の栽培に挑戦したので、種とりまでやってみよう!と思ったのですが…
ベランダ菜園とタネとりは、なかなかどうして相性が悪いなーとわかりました。
それはなぜか。まとめました。
たねとりには時間がかかる
私たちが野菜として収穫する部分は、植物のいろいろな段階を頂戴しています。
ホウレンソウや小松菜なら、「葉っぱ」。
ナスやトマトは「実」。
大根やニンジンは「根」。じゃがいもは「根茎」。
変わったところだと、アーティチョークなんかは「花(つぼみ)」ですね。
それに対して、タネを取ろう!と思えば選択肢はひとつ。
『花を咲かせて、実をならせて、そこから種を採る』のみです。
ホウレンソウや小松菜を食べようと思ったとき、早ければ1ヵ月くらいで食べることができますが、
ホウレンソウや小松菜のタネをとろうと思ったとき、栽培期間は食べるための栽培期間よりずっと長くなります。
トマトやナスなど「実」を食べるものは、ややハードルが下がりますね。
美味しく収穫するはずのトマトを収穫せずに少し熟させれば、タネを採ることができます。
それもやっぱり栽培期間は長くなる。
それに対して…
ベランダのスペースは有限
そう、我々の使えるスペースは有限です。
ベランダガーデナーにとって最も大事なことは、
『限られたスペースを、いかに有効に使い、たくさんの植物を育てるか』
であります。
収穫が終わってトウがたったホウレンソウや小松菜を、いつまでも植えておく余裕などない。
はやく引っこ抜いて鉢を空けなきゃ。土も再利用処理しなきゃ。
夏野菜の苗を植える時期は刻一刻とせまっています。ああ、通販で頼んでた苗が来週には届いてしまうぞ…!
ただでさえスペースも鉢も余裕なく、入れ替えには頭を悩ませる季節。
もう食べられない植物は早く退場願わないと、次がつかえているわけです。
ベランダ菜園でたねとりがやりづらい最大の理由、それは栽培期間を確保する(スペースの)余裕がないことなのでした。
それでもやってみたい場合は「マメ科」がおすすめ
熟したタネに近い段階を食べる「豆」は、もっともタネに近い作物。少し収穫せずに残しておけば、割と簡単にタネをとることができます。
また、タネをとるときもうひとつ考えなければならないのは「交雑率」。
要するに、ほかの品種と交雑しやすいかどうかの傾向ですが、マメ科は交雑が少ない自家受粉作物なので、初心者でも同じ品質のタネがとりやすいのです。
確かに、実感としてマメ科はタネがとりやすい。収穫が終わったあと立ち枯れさせておけば簡単にタネがとれます。
おまけ:とったタネは人にあげていい?種苗法に要注意。
登録された品種を勝手に増やされてしまっては、種苗会社は困りますよね?
品種は「著作権」みたいなもの。タネの管理には「種苗法」という法律があります。
日本では、登録種苗から個人的に自家採種することは認められていますが、他人に配布したり、無断譲渡を受けた種を使ったりすると、法律違反になります。
ホームセンターで買ったF1の種から自家採種するのはOKですが、その種や苗を他人にあげたりするのはNG。無償であげるのでもNGです。
種苗法違反は、個人の場合300万円以下の罰金に問われる可能性があります。実際に訴訟の事例もあるのだとか。
自家採種したタネを人にあげようとする場合は、その品種が登録されたものかどうかよく確認する必要があるのですね。