固定種とF1種って知っていますか?
F1とは、雑種強勢という遺伝の性質を利用した「一代雑種」のタネのこと。
今一般に売られている種はほとんどがF1。私たちが食べている野菜もほぼF1のタネから作られたものです。
それに対して固定種は、親から子・子から孫へと代々同じ形質が受け継がれているタネのこと。各地域などで古くから栽培されている「在来種」「伝統野菜」などにはこのタイプが多いです。
F1のタネは成長の揃いもよく、病気などに強い品種を作りやすいことから、今ではほとんどの商業野菜はF1のタネが使われています。
ただし、F1品種が市場を席巻している現状は、種苗会社が権力を握りやすいこと、F1をつくるために使われる技術や性質(雄性不稔・自家不和合性・遺伝子操作など)が本当に安全か?など、問題視する声もあります。
有名なのはこちらの本。
この本は、F1種ばっかりになっていいのか、固定種をもっと見直そう、という内容。
オーガニック系では食の安全としてすごく気にする人もいたり、ファーマーズマーケットなんかに行くと固定種にこだわって生産をしている農家さんもいたりします。
農学部で勉強してきた身としては、F1だからダメと危険をあおる風潮は嫌だなあという気持ちもちょっとある。
品種改良は人類の努力の証だし、それで救われてきた命もたくさんあるわけですし。
「固定種は美味しい、昔ながらの野菜の味がする」というのも本当かなあ、と思ったり。
ま、あれこれ考えるならとりあえずやってみるべと、固定種の野菜を育ててみることにした2016年秋冬なのでした。
固定種の野菜のタネは、先程ご紹介した『タネが危ない』の著者である野口勲さんの種苗会社、野口のタネオンラインショップで買うことができます。
いろんな種類があって、見ているだけもけっこう楽しいですよ。
選んだ野菜は4種類
選んだ野菜は『子宝三十日絹莢』『みやま小かぶ』『あかね法蓮草』『のらぼう菜』の4種。
結果はいかに。ひとつずつ見てみましょう。
子宝三十日きぬさや
なるべく長く収穫したい!ので、まき時期を2回にわけてみました。
1.9月下旬まき
2.11月上旬まき
の2パターンです。
9月25日にまいたもの。発芽までは約5日ほど。
発芽率もよく優秀です。よしよし。
このくらいになったら、大きい鉢に植え付け。
すくすく育って、白い花が咲きます。
年明け、1月11日収穫。
おー、立派立派!甘みがあって美味しいです。
そこから日々少しずつ収穫できます。
こっちの収穫が終わってしばらくたったころ、11月上旬にまいた方が花を咲かせはじめました。うしろに見えてる枯れ枯れのやつが第一弾です。
こちらは3~4月で食べる感じ。いいリレーです。
ちょっとソテーしたり。
お味噌汁に入れたり。
第一弾も第二弾もよい働きをしてくれました。採りたては甘くて味が濃くて美味しいよー。
みやまこかぶ
小かぶは何度か作ったことがあるので楽勝~♪と思っていたら意外な落とし穴が…
こちらも2回にわけてまきました。
1.10月上旬まき
2.11月上旬まき
こちらは10月10日にまいたもの。間引きしながら育てます。11月15日の写真。
かぶはどうしても虫食いするよね。まあちょっとくらいは気にしないことに。
11月23日、すでに小さなかぶが見えてきました。
かぶは間引いた葉っぱも美味しく食べられるのが嬉しいところ。
12月24日、収穫!
一度に収穫するのではなく、大きくなったっぽいところから順に抜きます。
これは1月26日の収穫。だいぶ大きくなってます。
ペペロンチーノにして葉っぱも一緒に。
生でも食べれるくらいやわらかくて甘くておいしい。
ただ、収穫が遅くなるとちょっとすが入ったり筋張ったりする部分もありました。
さて問題は、あとからまいた方です。
なんだか全然大きくなりません。まあそれでも間引き菜は食べられるので、摘んでは食べる。
大きくならないなー、と放っておいたら、あれれ。
3月中旬くらいから、つぼみが。
…このくらいならまだ食べれる。もう菜の花として食べる。それはそれで美味しいです。
最後残しておいたのは、4月にすっかりキレイな菜の花に…
というわけで、みやまこかぶは1勝1敗。
まきどきが遅くなると成長が止まり、かぶにはうまく育ちませんでした。
9月くらいから何回かにわけてまけばいいかもです。
あかねほうれんそう
ほうれんそうは正直、まきどきが遅れたかなーと思いました。私の仕事上、秋冬って一番忙しいのですよ(いいわけ)。
ほうれんそうのタネは、一晩浸水させてからまきます。まいたのは10月下旬ころ。
芽は出ましたが、成長がゆっくり。ゆっくりすぎる…!
2月2日でまだこんな感じ。
3月1日。
うーん、もう春になっちゃうよ。
もちろん間引き菜は食べられるので、少しずつは食べましたよ。
やわらかくて美味しい。けどそんなに甘くはないような。
そうこうしているうちに。
3月28日。花芽が…!
そして4月にはこんな感じです。
アカザ科ってこんな感じの花が咲くのね。せっかくだから咲いたらいいよ。ぐすん。
というわけで、すごーく長くプランターを占領したわりに、あんまり食べた感じはしませんでした。とほほ。
のらぼう菜
のらぼう菜は、東京都西部から埼玉県飯能市周辺で古くから栽培されてきたアブラナの一種。菜の花を食べる菜っ葉です。
江戸時代に幕府がこの生産を奨励したらしく、飢饉から民が救われたとの記録が残っているそう。まさに江戸の在来種なんですね。
トウ立ちした最初の菜の花は、甘くて味が濃くてすごく美味しいらしい。ごくり。
9月25日、種まき。ポットで苗を育ててから定植することにします。
1週間ほどで発芽し、生育も順調。
11月12日、プランターに定植しました。
しばらくすくすく育っていたのですが、問題発生!!
なんだこれはー!誰だー!
放っておいたらこんなことに。
調査の結果、ヒヨドリが来て食べていたことが判明。
もっと早くネットをかぶせたりすればよかった…とりあえずヒモを張って防御。
3月1日。ここまで盛り返しました。つぼみが見えてきそう!
3月9日。
3月12日。そろそろ食べてもいいですかー!
さっとソテーしてみましたよ。
うん、甘い!美味しい!
でも、なんかボリューム感が想像してたのと違うような。
その後、脇芽ものびてきてぽちぽち収穫できていますが、もっと菜っ葉っぽいとこを食べたいんだけどなあ。
いまいち腑に落ちません。
これはヒヨドリ番長のせいなのか。はたまたプランター栽培だからなのか。
固定種チャレンジまとめ
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。今回のチャレンジは6戦3勝2敗1分、ってところでしょうか。
普通のF1のタネに比べて、まきどきが大事なのかなあ、という印象。成長もゆっくりですね。
秋冬野菜は寒くなるとさらに成長がゆっくりになってしまうので、早め早めにまく方がいいのかもしれません。
うーん、来年はどうしよう。きぬさやとこかぶはリピートしてもいいかなあ。