ずっと気になっていた、高村友也さんの本を立て続けに読みました。
高村さんは郊外の安い土地を買って自分で適当に小屋を建てて暮らす「Bライフ」実践者です。若いのに、めっちゃ哲学的なブログが面白い。(東大哲学科卒らしい。すごい)
高村さん自身のBライフについては、こちらの本にまとまっています。これもかなり面白い。
今回紹介するのは『スモールハウス 3坪で手に入れるシンプルで自由な生き方』。
こちらは海外(主にアメリカとオーストラリア)でスモールハウスに住む6名の例を取り上げ、スモールハウスに住むとはどういうことか?を考える本です。
まえがきからガツンときます。
この国は、生きているだけで最低限しなければならないことが多すぎて、普通に生活していこうとすると、移動手段を確保して、情報ツールを携えて、身なりもそれなりに整えなければならないし、なんだかんだと手続きやら、契約やら、お金の計算やら、人づきあいやら、そうこうしているうちに一生が過ぎていきそうな勢いだ。その頂点にあるのが「家」という存在だと思う。
それぞれの生き方に合わせて、それぞれの家を選ぶようになれば、平均的なマイホームの概念は消え去り、必ずしも庭付き一戸建て云千万円の家を買う必要がないと気づくと、定職主義的な雇用の問題はいつの間にか消滅する。
豪華すぎる巨大な家を各家庭にひとつ与えるために必要だった資源やエネルギーは半減し、経済は回れば回るほど良いと思っていた幻想は何だったのかと疑問に思い始め、これはもしかしたら世界平和に通ずる道なんじゃないだろうか。
本当に、大きな家は必要か?
この本は5年前に出版された本です。スモールハウスムーブメントはアメリカからはじまり、今やじわじわと広がりを見せているように思います。
日本でも「移住」「小屋暮らし」「モノを持たない」「ミニマリスト」「断捨離」などのキイワードでじわりと広がりつつある価値観が近いのではないでしょうか。
「本当に必要なものはなにか」「それを見極めればもっとゆとりをもって暮らせるんじゃないか」「経済活動から少し降りてもいいんじゃないか」というようなこと。
実践者はまだ少ないけれど、気づいている人は増えているんじゃないかしら。
まず、面積的にも、金銭的にも、家は大きすぎないか?という疑問から。
現代社会で家は、何十年ものローンを組まないと購入できないもの。所有することによって自分の自由が奪われてしまう。本当にそれが必要なのか?という問い直しです。
もし家が誰にでも100万円以内で建てられるなら、職業に縛られずもっと自由に暮らせるのではないか。
家を建てるにはお金が必要、生きていくのにもお金が必要、そのためにはもっと働かなくちゃ。
頭がそのように固定されている人は、読むとハッとすることがたくさんあるはず。
実践者たち、それぞれの理由。
本の中では、6名の実践者が紹介されます。みな10坪ほどの小さな家を自分で作り、暮らしている人たちです。
コンパクトでミニマム。このくらいなら自分で作れちゃう。
面白いのは、それぞれの実践者がスモールハウスに住むことにした理由 がみんな違うこと。
スモールハウスムーブメントの火付け役になったジェイ・シェファーは
と言っています。
シェファーに影響を受けてスモールハウスをつくったグレゴリー・ジョンソンは
という理由。
社会正義や環境問題に興味があったディー・ウイリアムズは
とのこと。
共通しているのは、とりあえずやってみちゃおう、というフットワークの軽さと、人へ押しつけがましくないこと。
オフグリッドや自給も、どこまでストイックにやるかは人それぞれ。みながそれをやるべきだ、と言うことはないのです。
実践者はそれぞれ自由に、自分に合った人生を生きていてとてもいい。
住まい方は、考え方の現れであるということ。
私が一番共感したのは、思想を自分で実践する、ということ。
これがまさに、市民的不服従の精神。
解決しなければならない社会問題や主張したいことを、相手に対して声をあげるのではなく、自分が実践して変えてしまおう、というスタンス。
それが「答えを生きる」という表現に現れています。
例えば日本でも原発事故のあと、エネルギーに関していろんな議論がありました。
でも、強い言葉で政府や電力会社を批判しても、帰ったら電気ポットでお湯を沸かしている…という人もいるよね。それでは「答えを生きる」ことにならないなーと思うのです。
スモールハウス実践者たちは声高に何かを批判したりはしませんが、自分の頭で考えて「これはおかしい」「これはいらない」と思ったことからは手を引く。
それはあくまで「自分の」判断。他人に押し付けるものではない。
その実践力と軽やかさがカッコいいなあ、と印象的でした。
心に引っかかったフレーズメモ。
いろんなことに感銘を受けたのですが、すべてを咀嚼して紹介するのは難しい。そんなに厚い本でもないのになあ。
ということで、読みながら気になったフレーズやことばをメモしたものをそのまま公開しようと思います。
考えるきっかけになる言葉があったら嬉しいです。
安く上げるために小さくするのではなく、よりクオリティの高いものを使うために、小さくする
→1.大きな家は贅沢である
→2.贅沢なものの消費によって回る経済は誰も幸せにしない
「経済からの自由」を確保するために必要なのは、生きていく最低限の生活がなんであるかということを、既存の経済に惑わされることなく自分の頭で再確認することと、それ以上の重荷になることを寄せ付けない精神力だけ。スモールハウスはそういう使い方もできる、ということ