楽しみにしていた『リトル京太の冒険』見てきました。
くすりと笑いつつも胸に残る、素敵な映画だったのでご紹介です。
防災ずきんの京太、たまらなくかわいいぞ。
『リトル京太の冒険』ストーリー。
舞台は群馬県桐生市。
主人公の京太は「あの日」以来、蛍光グリーンの防災ずきんをかぶり続けている少年。
陽気な母と、仲良しの詩織ちゃんと詩織ちゃんのパパ、外国人英語教師のティム先生などに囲まれ、楽しく暮らしています。
ところが大好きなティム先生が故郷に帰ってしまうことを知った京太は、大胆な行動に出て…。
震災でトラウマを負った京太の成長を、実際に5年の歳月をかけて描いています。
短編『京太の放課後』『京太のおつかい』からの完結編。
監督は大川五月さん。
もともと短編『京太の放課後』からスタートしたシリーズで、今回の『リトル京太の冒険』は完結編であり、大川監督の長編デビュー作でもあります。
「冒険」内では短編の映像も挟み込まれているので、幼い京太や詩織も登場します。
子供って本当に成長が早いよなあ…と思うと同時に、それは震災からの年月でもあるのよね、としみじみ。
京太役の土屋楓くんは、実際に小学校4年生から中学2年生になっています。
顔つきが大人びていくのが目に見えてほんと可愛い。『リトル京太の冒険』ではその軌跡を見ることができます。
正しく「こわがる」ってどういうこと?
京太の防災ずきんで表されるテーマは、どうやって「安心」するか、ということ。
地震とか、放射能とか、大人だってどこまで怖がっていいのかわからない。
それでも生きていくしか仕方ないじゃないか、って目をつぶっていることから、京太は逃げていない。胸がぎゅっとなります。
親の気持ち側で見ると、また切実。
この街に暮らすと決め、普通の生活を続ける京太の母(清水美沙)。
放射能を(と劇中では言及されていないけど)怖がって、子供に防護服を着せて外に出さない、詩織のパパ(眞島秀和)。
大人なら、どっちの気持ちもわかるよね。震災後、まさに直面した人も多いのではないでしょうか。
京太はそんな詩織のパパをかっこいいと思い、京太の母は自分が子供を安心させられていないと悩む。
そして外国人であるティム先生がこの街にいてくれることの意味。京太は幼いながら、震災後の「安心」を必死に考えているのです。
そんな京太が、最後は防災ずきんを脱ぎます。どんな気持ちの変化があったのか。
ティム先生との別れのシーンは思わずもらい泣き。
いち少年の成長物語ではあるけれど、震災にどう向き合うか、どう向き合い続けるか、観終わったあと思わず自分を振り返ってしまうのでした。
あたたかく、あとからじわりとくる名作。
重たいテーマのようですが、ほのぼのしたアニメーションや回想シーン、くすりと笑ってしまうシーンも満載で、ほっこり楽しめます。美しい桐生の街並みも見どころ。
大人役の清水さんと眞島さんはさすがの存在感で、京太と詩織がのびのび愛されているのがよく伝わってきます。
そしてこの映画の雰囲気を作っている決め手は音楽。サウンドトラックは全編HARCOさんによるものです。(ご本人も先生役で出演されてます!)
HARCOさんといえばこの曲。つい口ずさんじゃうよね。
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京太の周りの大人たちも、みんな必死に考えて迷って生きている。
京太の成長は、それに気づくことなのかもしれません。
一見ほのぼの軽い感じなんだけど、震災を経験した人として、大人として、親として(親じゃないけど)、いろんな視点で考えさせられる作品でした。
上映館が少ないのが残念!ぜひいろんな人に見てほしい1本です。
監督のインタビューも。
大川監督インタビュー:『リトル京太の冒険』大川五月監督 “人と人のつながりが互いを成長させる”