見学・体験記

日本人はコケ好き?苔松苔梅展@千葉県立中央博物館に行ってきた

苔松・苔梅をご存じでしょうか。

苔松・苔梅とは、お正月の生け花などでたまに見る、木の幹が苔むした松や梅の枝のこと。

これ、名前は「苔」というんだけど、じつはコケ植物ではなく、地衣類のなかま。

(日本の国歌・君が代のなかにも「苔の~むすまで~」という歌詞がありますが、これも地衣類のことらしいです)

そんな「苔松・苔梅」にスポットを当てた展示があるというので、千葉まで行ってきました。

苔松・苔梅はいつから縁起の良いものとされている?

千葉県立中央博物館。千葉駅からバスで10分ほど

日本では、苔松・苔梅は古くから「縁起物」として扱われてきました。苔がむすほど長く生きた樹は、長寿の象徴。

展示では、苔松・苔梅がいつから特別なものとして扱われていたのかを、書物や日本画から読み解きます。

・万葉集には「苔の生えた松」の記載がある

・安土桃山時代の屏風絵に描かれた松や梅には苔がはえている

・室町~江戸時代のいけばなの花伝書には苔松と普通の松を使い分けるような記述がある

・江戸時代の屏風絵や着物の柄にも苔松が描かれている

などなど、かなり古くから「苔がはえた松や梅」は縁起のよいものとして描かれているのがわかります。

確かに!地衣類がいる!

日本酒の「越乃寒梅」のラベルには創業当初から苔梅の枝がデザインされていますが、いまでもコケが生えているんだそうですよ。

能舞台に描かれる「老松」比較がすごい

能が舞われる舞台の背景には必ず「老松」が描かれています。これもだいたい苔が生えているのですが、日本各地の能楽堂30か所の老松を比較する…という展示もありました。

これはウメノキゴケっぽい、これはレプラゴケっぽい、などちゃんと拡大してコメントしています。よく調べたよね…

地衣類とはどんないきものなのか

苔松苔梅についている「苔」はコケ植物ではなく、地衣類というジャンルのいきもの。それはどういういきものなの?という展示も、博物館らしく詳細にまとめられています。実物をルーペで見ながら解説が読めるようになっていて、わかりやすい。

ざっくりいえば、

・地衣類とは、菌類と藻類が共生したもの

近所の公園の木なんかでも普通に見られます。コンクリートの塀なんかに黄色いシミみたいなのがついていることもありますが、あれも地衣類。

かなりディープな世界なので、興味がある人は関連書籍など読んでみると面白いです。

リトマス試験紙をつくる地衣類

酸性かアルカリ性か調べるときに使う「リトマス試験紙」。あれはリトマスゴケという地衣類で染めたものなのです。それについての展示も詳細にありました。

リトマス試験紙に使うリトマスゴケはヨーロッパのものなのですが、日本にもリトマスゴケ科の地衣類はいるらしい。

さらに、苔松苔梅でおなじみの「ウメノキゴケ」からもリトマス液が抽出できるそうで、展示内で実験中でした(2月に染物をやってみるそうです)。

ふつうに染め物として使うのも綺麗ですね。

現代も使われる苔松・苔梅。生産者はどんなふうに作る?

いまもお正月の花材として使われる苔松・苔梅。毎年12月の松市では、苔松・苔梅の市もたちます。

茨城県の苔松生産者を取材したパネル展示があり、仕事柄たいへん興味深く読みました。

・昔は山採りだった苔松も、今は栽培されているもの

・苔松用の松は畑で4~15年栽培する

・苔(ウメノキゴケなどの地衣類)は他の木から取ってきて貼っている(自然に見せるための貼る技術がある)

接着剤で貼ってるよね~とは思っていましたが、これもひとつの技術。そして苔梅の生産者というのはいないそうで、苔梅に関しては良い感じに苔むした梅を専門業者が切ってくるのだとか。

つまり苔松についた地衣類は後貼りだけど、苔梅の地衣類は天然でついたものってことなのか~

いまは苔松苔梅を使うような大掛かりな活けこみも減っていると思うけど、こうやってコツコツ生産してくれる人がいるから、お正月の縁起物として使えるわけですね。ありがたいことです。

―――

歴史から見る文化的な側面、地衣類の生物学的な知識、今の生産流通事情まで、幅広く「苔松・苔梅」「地衣類」について学べる良い展示でした。マニアックではありますが、興味のある方はぜひ。2022年5月8日まで。

>令和4年春の展示 「苔松苔梅 ―春を寿ぐ うめのきごけ―」

博物館の常設展もボリュームたっぷり。日本で唯一「生態園」がある博物館だそうです。

>千葉県立中央博物館HP

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